杉並区内に在住・在勤のマンション管理士の団体です
 

平成24年10月24日 マンション管理セミナー
通常総会議案書の見方~実例に学ぶ 築後38年マンションの正常化への道~


講師:杉並マンション管理士会会長 田村 晃清


毎年行われている分譲マンションの通常総会、その議案書は適正に作成、運用されているでしょうか。 事業報告書や決算報告書は分かりやすく作られ、管理組合の適正な運営に寄与するものになっているでしょうか。 経年化と共に数々の問題が顕在化してきた自主管理マンションが正常な管理の状況を取り戻し始めた実際の 事例を基に、そこで作成配布された議案書からその見方や注意点を学んでいただくとともに、皆様のマンションでも起り得る諸問題への解決のヒントをご提示しました。

1.総会開催案内状のポイント

1.案内状の発信日は適正でしょうか?

  • 区分所有法では開催日の1週間前までに、標準管理規約では2週間前までに発送することが求められています。あなたのマンションの管理規約ではどのように定まっていますか?

2.発信者は、正しく、管理組合の理事長になっているでしょうか?


3.必要な議案が入っているでしょうか?

<例>
第1号議案  事業報告・決算報告及び監査報告承認の件
第2号議案  管理委託契約更新承認の件 (注1)
第3号議案  修繕積立金運用案承認の件【ある場合】
第4号議案  修繕積立金取り崩し工事承認の件【ある場合】
第5号議案  管理規約変更承認の件【ある場合は特別決議(注2)が必要です】
第6号議案  事業計画・予算案承認の件
第7号議案  役員選任承認の件

(注1):国交省の指導では、契約期間は1年、自動更新ではなく総会決議によることが好ましいとされています。
(注2):区分所有者及び総議決権の4分の3以上の賛成。




2.出欠票・議決権行使書・委任状書式について

1.出席予定者が当日欠席した場合の対応

  • 「やむを得ず当日欠席した場合は、総会議長に委任します。」の文章が入っていると、総会の運営は安定します

2.委任状の扱い方

①総会議長に委任
⇒ 出席者及び議決権行使書の多数意見に運用するのが公正な議長の立場。特に、特別決議議案がある場合、全員を賛成とするか、比例配分とするかにより、結果は変わります。

②理事長に委任
⇒ 理事長は提案者なので、「賛成」としての運用になります。

 

3.提出期限、提出方法が記載されているか。

  • 特に特別決議議案がある場合など、提出期限後、未提出者に連絡を取って最低限4分の3以上の出席者を確保する必要があり、その余裕を持って、提出期限を定める必要があります。特別議案が無い場合でも、常に4分の3以上の出席が得られるような習慣づけも重要です。

 

3.式次第は?

次第があると、総会がスムーズに進行します。

<例>
1.開催あいさつ
2.議長選出(注3)
3.議事録署名人選出
4.総会成立宣言(出席者確認)
5.議案審議
6.その他意見交換(注4)
7.議事の確認
8.閉会あいさつ

 (注3):原則は理事長が務めますが、議案の内容については、議長(理事長)の一人舞台が懸念されるケースもあり、
     理事長以外の方が務める方が適正な場合もあります。
 (注4):この会での議決はできません。



▼以下、今回の事例マンションの総会で実際に配布された議案書を提示してご説明しました。▼


4.第1号議案(事業報告・決算報告・監査報告)について

1.事業報告

1.理事会メンバーの紹介
2.理事会活動報告
3.年間事業報告
 ①管理組合活動
 ②契約関係(注5)
 ③設備点検等
 ④修繕工事
 ⑤その他管理

※上記について更に細分化した項目を縦軸、実施月を横軸(15ヶ月分)にした表に実施日を書き込んだ詳細な資料が提示されました。

(注5):顧問契約、管理委託契約の他、マンション総合保険契約やエレベーター保守契約等があります。経年化の進んだマンションにおいては、エレベーター部品の2012年問題(同年12月をもって一定以上古いエレベーターについてメーカーが部品を生産しなくなる)への対応に留意が必要です。

 

2.決算報告

1.一般会計と特別会計
⇒ 管理費と修繕積立金は区分して管理される必要があります。

2.前期繰越金の記載位置
⇒ 収入の最初に入れると単年度の実績が分かりにくくなります。

3.貸借対照表
⇒ 管理費、修繕積立金を合算した方が適正と考えます。

4.残高証明の確認事項
⇒ 管理組合名義になっているか。貸借対照表の額と同一か確認。

5.監査報告(業務監査)
⇒ 理事会に出席して活動状況を確認。議決には加わりません。

6.監査報告(会計監査)
⇒ 諸表の確認。適正運用の確認。

7.剰余金処分の考え方
⇒ 大部分を修繕積立金に移管するのが適当です。




5.第2号議案(管理委託会社との管理委託契約更新の件)について

※管理委託契約締結は、総会決議事項

1.管理委託契約の期間は?
・通常は1年間の契約

2.重要事項説明会は?
・同一条件の場合は、重要事項説明会は必要なし。理事長(通常は理事会)に対して説明します。

3.重要事項説明書は?
・説明会を開かない場合でも、重要事項説明書は全戸に配布します。

4.否決された場合は?
・標準管理規約に「期間を定めて暫定契約を結ぶことができる」とあります。問題の無い引き継ぎの為には4~6ヶ月の暫定契約が適当です。




6.第3号議案(長期修繕計画に伴う改修工事及びそれに係わる修繕積立金取り崩し承認の件)

※修繕積立金取り崩し工事は、総会議案とします。

1.すでに検討が進んでいれば、工事会社・検討金額を含めて提案します。
2.工事予算額を設定する。
3.検討がこれからならば、発注先・発注金額は、予算額を上限に理事会一任とします。
4.予備費を見込んでおくことも重要です。




7.第4号議案(平成24年度事業計画及び予算案承認の件)

※事業計画は事業報告と同じ書式にします。

1.翌年の通常総会月まで記載します。(通常は15ヶ月の表)
2.修繕工事の計画をどのように立てるか?
3.予算額をどのように計上するか?
・2、3とも、上記第3号議案と連動。承認される前提で事業計画・予算案を立てますが、否決の際には、事業計画・予算案も否決された部分を修正した上で、その他の部分を審議してもらいます。議事録配布時に修正予算案を別途添付し配布します。
4.予備費の考え方。
・予算にない出費は臨時総会で承認を得て支払うことになるが、急な出費の必要に対応するためには、ある程度の予備費を認め、理事会が活動しやすくする配慮も必要。管理費会計だけでなく、修繕積立金会計にも、常識の範囲内で予備費を認めておくことも必要です。




8.第5議案(平成24年度管理組合役員選出の件)

※管理組合役員選出方法

1.任期は?
⇒ 2年制で半数が交代(半数を残す)する方法が理想です。

2.選出方法は?
⇒ 輪番制が普通です。

3.輪番制の場合の周知方法は?
⇒ 輪番制の場合、翌年ないし向こう5年くらいまでの輪番予定者を議案の後ろに添付しておく(一定の期間をもって覚悟を決めてもらう)方法も有効です。




▼以下、今回の事例マンションにおける各種懸案事項がどのように解決されていったかご説明しました。▼


9.当該マンションの検討課題の結果

1.総会決議事項

・管理会社との管理委託契約 ⇒ 前年度23年6月23日総会終了後に締結
・排水管一部更新工事 ⇒ 23年6月23日の総会決議に基づいて同年8~9月に実施。
・損害保険加入 ⇒ 23年6月27日加入(従前の無保険状態を解消)

 

2.管理規約・各種細則の見直し、制定

・管理規約の見直し 23年5月22日~10月22日、各月1~2回の理事会にて検討作業。
・使用細則の制定  23年11月19日~24年1月28日 各月1回の理事会にて検討。
・併せて、共有持分割合表の訂正案を作成。
※登記された1F店舗の違法増築部分を管理費負担割合からも除く必要(違法状況を管理組合が認めない意思表示の為必須)があり、新たな持分割合表を作成。
・説明会及び臨時総会  24年2月25日説明会、24年3月17日臨時総会で決定。
※臨時総会時の議案書資料もご提示しました。

 

3.長期修繕計画の策定

※この時点で修繕の為の手持ち資金は1000万円。竣工図面なし。

・竣工図面のない当該マンションの長期修繕計画を作成する為に、既存の一級建築士事務所では、図面作製に100万円、長期修繕計画作成に100万円、漏水部の調査費70万円‥手持ち資金の1/4が掛かるという見積り。
⇒ 管理会社に安い金額での作成を依頼(23年9月9日)。

・杉並区の耐震アドバイザー派遣制度(簡易耐震診断が無料)の利用や、東京都の緊急輸送道路沿道建築物に対する耐震診断・耐震改修への助成に該当するかどうかの検討等も開始。

 

4.管理費・修繕積立金改訂

・23年11月19日に長期修繕計画の原案提出。現行3500円の修繕積立金を5倍に設定した他に、1戸当たり30万円の一時金徴収を見込んだ原案。⇒ 理事会で検討、見直しの依頼。

・工事時期を、1.命にかかわること 2.ライフラインに関わること 3.美観 という優先順位で見直し、結果、修繕積立金5.5倍に値上げ、ただし一時金の徴収なしの修正計画案を作成(24年1月28日)。

・管理費を値下げし、管理費・修繕積立金合計で現状の2倍になる案を作成。

・24年2月25日説明会、3月17日臨時総会にて、一部の反対はあったものの可決。

 

5.長期滞納者対策

※今後の長期修繕計画に伴い、借り入れ(住宅金融支援機構より)が必要。借入が認められるには、

1.管理規約が整備されていること
2.会計処理が適正な分別管理となっていること

の他に、

3.一年間の修繕積立金収入額の5%を超える未収金がないこと

が条件となっており、当時存在した3件の長期滞納の解消が必要であった。

・1件は転売により、取得者(不動産会社)から遅延損害金を含め全額回収。
・1件は支払計画書の作成がなされた上で、当月分+過去1ヶ月分ずつの回収が開始。
・1件は共有者1名死亡、他1名の養護施設入所者に対し、公示送達前提の法的措置を取る旨、臨時総会で承認を取るも、その後、弁護士や杉並区との連動で本人の承認を取り、定額自動送金を口座振替にするなどし、解決に至った。

 

 

 

 

 


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