第13回「意外と知らないマンションの総会の進め方」

第13回「意外と知らないマンションの総会の進め方」

総会は管理組合の最高の意思決議機関です。マンション内で生じる様々な問題を解決して行くためには、総会の円滑な運営が必要です。今回 のセミナーでは、総会を進める上で大切なポイントは何かを、模擬総会形式でお伝えしました。模擬総会の議案は「耐震改修等修繕工事の推進」。杉並マンション管理士会の会員がそれぞれ理事長、副理事長、理事、組合員、マンション管理士役を演じて、総会運営上で問題となるポイントを具体的にとりあげました。

なお、取り上げたポイントには色々と意見が分かれる難しい論点も含まれていますが、今回の模擬総会では以下のような結論としました。

Q
委任状と議決権行使書の両方に署名捺印があるもの、あるいは、署名はあるが捺印がないようなものの取り扱いはどうしたらいいのでしょうか?
A

本人の意思をできるだけ尊重するという立場にたって、委任状と議決権行使書の両方に署名捺印があるものについては、議決権行使書を優先するのがベターです。また管理組合から配布した様式上捺印の欄があっても、同様の趣旨により、捺印が無くても署名があれば特別の事情が無い限り有効と扱うのが一般的です。

Q
区分所有者が夫だけで、妻は区分所有者でない場合、総会に妻だけが出席しました。この場合、委任状の提出を確認する必要があるのでしょうか?
A

夫から妻に口頭で委任した場合でも、法律的には有効です。ただ、できるだけ間違いがおきないようにするには文書で確認できた方が望ましいので、委任状の提出を管理組合総会で求めているケースが一般的です。しかし、全ての人に一律に委任状を求めるのも現実的には難しいので、総会の成立ということを優先的に考えて、例えば管理規約に「配偶者又は1親等以内の成人でマンション内に現に組合員と同居している者が代理出席している場合は、委任状が提出されているものと推定する」という文章を盛り込むことで対処している管理組合もあります。

Q
採決方法は「拍手」「挙手」のどちらが望ましいのですか?
A

原則論から言うと、「挙手」が原則で、「拍手」はむしろ例外です。ことに重要な案件の場合は、後々問題が生じないよう、挙手方式により正確に賛成の数を確認しておく方が望ましいといえます。

Q
総会の途中で、事前に提出していない修正案を出すことは可能ですか?
A

管理規約に「総会においては予め通知した事項についてのみ決議することができる。」と規定されているのが一般的です。この規定を読むと、総会で新たな提案を行うことは出来ないように考えられます。しかし、いかなる動議も全くできないとなるとそれも問題ですので、通常は、現在審議中の議案と同一と認められ得る範囲内の動議、即ち予め通知した事項と同一の事項と認められる動議であれば許されるものと解釈されています。

Q
総会中に新たな修正案が提出された場合、委任状や議決権行使書の取り扱いはどうなるのですか?
A

管理規約に「総会においては予め通知した事項についてのみ決議することができる。」と規定されているのが一般的です。この規定を読むと、総会で新たな提案を行うことは出来ないように考えられます。しかし、いかなる動議も全くできないとなるとそれも問題ですので、通常は、現在審議中の議案と同一と認められ得る範囲内の動議、即ち予め通知した事項と同一の事項と認められる動議であれば許されるものと解釈されています。
しかし、予め通知した事項と同一の事項と認められない動議であれば、別途臨時総会を開催して審議する必要があります。とは言え、実際の総会では、次回臨時総会を開催する時間的余裕が無い、議決権行使の件数が少ない等の場合は、議決権行使書を無効扱いとして採決するのも一案と考えます。

Q
管理費滞納者の氏名を、議案書の中に本人に断りなく公表した場合、プライバシーや個人の名誉の点で問題となりませんか?
A

プライバシーの保護ということも勿論大切ですが、未収金の問題に対しては法的処置も辞さないという毅然たる態度で臨むことが管理組合の運営にあたって非常に重要ですし、毅然たる態度をとることによって滞納の早期解消が可能になったケースも少なからずあります。総会に諮った上で管理費等滞納者に法的手段をとるためには、対象となる滞納者の部屋番号、氏名などを議案に明示する必要がありますが、その場合でも本人に事前に通告し本人の対応を待ちそれでも何らの返答も無いことを確認された場合に始めて氏名の公表に踏み切る等事前に十分慎重な対応を行っておく必要があります。

Q
修繕特別委員会は規約に書かれていなくて設置できますか?
A

規約上に、特別委員会の制度について何ら規定されていない管理組合も多く、総会決議で特別委員会の設置ができるのかという質問が出されるケースもあります。しかし、規約に書いてないから一切駄目という訳ではなく、規約に反しない内容であれば、特別の委員会の設置は当然可能です。ただし、このような委員会はあくまで理事会の補佐機関であり、理事会や総会に代わる権限を持つものでないことは十分認識しておく必要があります。ちなみに、標準管理規約は、平成16年に改訂され、「理事会の補佐機関として専門委員会を設置できる」旨の明文規定が第50条に規定されました。

なお、今回は、杉並区の「耐震化支援事業」については杉並区都市整備部住宅課の担当者に、また「共用部分のリフォームローン制度」については住宅金融支援機構まちづくり推進部の担当者にそれぞれ会場においでいただき事業や制度の内容について説明していただきました。