第14回「マンション会計のチェックポイント」
講師 杉並マンション管理士会会長 田村晃清
マンション運営に適切な会計管理は欠かせません。しかし、会計管理が管理会社や特定の住民まかせになっていたり、管理費等の滞納が増えるなど、問題をかかえるマンションが増えてきています。「難しそう」と敬遠しがちなあなたに、マンション会計の分かりやすい基礎をお教えします。

マンション決算報告書の見方
マンションの会計の方式には、企業会計や公益法人会計などがありますが、多くのマンションは企業会計を使っています。今日は、企業会計に沿って説明します。
決算書は5つの書類で構成されています。
- 収支報告書(損益計算書)
- 貸借対照表
- 余剰金処分案
- 監査報告書
- 付属資料(残高証明書など)
です。収支報告書は一般会計の部(管理費の部)と特別会計の部(修繕積立金の部)の2つに分かれます。管理費と修繕積立金を区分して経理することが、適切な会計管理には欠かせません。
◇ 一般会計の部(管理費の部)のチェックポイント
「収入の部」ですが、注意点の一つは、駐車場使用料です。共用部分の使用料は、規約でどこに充当するかを決めますが、多くのマンションでは駐車場使用料を一般会計に入れています。売主が、販売時に管理費が余り高くならないようにしたためです。ただし、国土交通省は駐車場使用料を修繕積立金に組み入れることを奨励しています。
次に「支出の部」です。「支出の部」は「定額委託業務費」、「定額以外の業務費」、「共用部分直接費」に分かれます。
まず、各支出項目が適正かどうかをチェックして下さい。「定額委託業務費」には、事務管理業務費、管理員業務費、清掃管理業務費などが含まれます。管理員業務費は、週40時間勤務の場合は月25万円くらいが目安です。
中には「定額委託業務費」の項目ごとの経費を書かずに、合計のみ記載している管理会社もあります。この場合は高いか安いか管理組合は判断することができません。やはり、明細を表示すべきだと思います。
国土交通省は委託業務を「定額業務委託費」と「定額以外の業務委託費」の2つに分けていますが、基準がありません。例えば、消防設備点検を年2回、貯水槽清掃や排水管清掃を年1回行った場合、管理会社によって、「定額以外の業務委託費」に入れているケースもあれば、それらを12等分して「定額委託業務費」に入れているケースもあります。
次に「共用部分直接費」です。エレベーター保守費は、保守会社と管理組合が直接契約している場合は「共用部分直接費」に入ります。しかし、多くの管理会社では、エレベーター保守費を「定額委託業務費」に計上しています。この場合には、管理会社の管理費が上乗せされていて、割高となっています。管理組合としては手間がかからなくていいということも言えますが、経費の面を考えれば管理組合との直接契約が望ましいと言えます。
収入合計から支出合計を引いたものが「当期余剰金」となります。当期余剰金の額によって、マンション会計の健全性を判断することができます。
◇ 特別会計の部(修繕積立金の部)のチェックポイント
特別会計に関しては、長期修繕計画と整合性があるかどうかを調べることが大切です。
◇ 貸借対照表のチェックポイント
修繕積立金の残高が適正に運用されているか、未収金が大きすぎないか、余剰金が適切に運用されているかなどをチェックしてください。
◇ 監査について
監査の際には、まず、銀行預金通帳写しそれに残高証明書を見てください。残高証明書では、貸借対照表の預金の金額と一致しているかをチェックすると同時に、名義もチェックしてください。名義が管理組合名になっていれば問題ありませんが、管理会社の名前になっていた場合は要注意です。いまは「マンション管理適正化法」で保証業務についての決まりがありますが、かつては、管理会社が倒産した際に、大きな問題となったことがありました。 その他、総勘定元帳、領収書綴り、月次収支明細書、個人別収納状況一覧表などをチェックします。
※なお、今回のセミナーでは、この後、未収金対策についてもお話しましたが、「要旨」の方は、その部分は割愛させていただきます。

