第18回「大規模修繕を成功させるために」 ~管理組合の役割~

第18回「大規模修繕を成功させるために」 ~管理組合の役割~

講師 杉並マンション管理士会会員 一級建築士 NPOリニューアル技術開発協会副会長 塚部 彰

マンションは適切な時期に大規模修繕工事を行なうことが、快適で安全な住まいの維持と財産価値の保全のために大変重要です。管理組合が、大規模修繕工事に取り組むためには、どのような理事会運営が必要かを体験談を交えながら話してもらいました。今回の講演会の要旨は、「大規模修繕工事のパートナー選び」を中心にまとめました。

大規模修繕とは

通常、築10~12年で第1回目大規模修繕、築20~25年で第2回目大規模修繕、築35~40年で第3回目大規模修繕を行うことになります。
第1回目の内容は躯体補修、洗浄、外壁塗装、鉄部塗装、タイル補修、防水工事、シーリング工事など。
第2~3回目大規模修繕には、第1回目の建築工事に加えて、ドアなど金属部分の取り換え、給排水設備の更新、照明他電気設備の更新、ドアサッシの更新、エレベーターの修繕、機械式駐車場の更新、利便性・快適性向上のための工事などが加わります。

大規模修繕成功のためのポイント

大規修繕を成功させるためには、パートナーとなるコンサルタント選び、そして、工事会社選びが大切です。
そのためには理事会・修繕委員会の組織づくりを上手に行う必要があります。
理事たちで勉強会などを開き、大規模修繕についての共通認識を持つことも大切です。また、修繕委員会には最低2名の理事が参加し、理事会との意思疎通をよくしておくことや、修繕委員会は諮問機関という位置づけを明確にしておくことも大切です。
組織づくりに失敗して、管理組合が内部分裂してしまった例がないわけではありません。 修繕委員会は、理事会とともに、大規模修繕を進めます。しかし、大規模修繕工事は複数年にまたがり、理事の任期より長期化するため、修繕委員会が工事の進め方や考え方の継続性を保つことが必要です。
ですから、修繕委員会は工事の準備から工事が終わるまでメンバーを固定することが望ましいと思います。

パートナーに何を期待するか

修繕委員会が立ち上げた後に起きるのは、大規模修繕工事のコンサルタントを頼むのか頼まないのか、頼むとしたらどのようなところに頼むのかという問題です。  
パートナーとなるコンサルタントは、建物診断業務、改修設計業務、工事会社選定補助業務、工事監理業務、長期修繕計画の作成又は見直しなどの業務を担当します。
一般的に管理組合がコンサルタントに望むのは、

  1. 修繕の的確な性能を有する工事をしたい
  2. 円滑な工事を実施したい
  3. わずらわしさを回避したい
  4. 公明性、透明性を持った工事の推進のためのパートナーに依頼したい
  5. 信頼できるパートナーを選びたい
  6. 工事会社選定のアドバイスをして欲しい

などです。管理組合にとって大切なのは、コンサルタントに何を望み、期待するかを十分検討し、絞り込んでから選択することです。

パートナー選びのそれぞれの特徴

パートナーの選び方には4通りの方式があります。

1つは、委託管理会社による責任施工(設計施工)方式、2つ目は、施工会社による責任施工(設計施工)方式、そして、3番目は、独立系設計事務所による設計監理方式、最後は、パートナーを頼まず、管理組合が直営で行なう方式です。
それぞれ特徴があり、管理組合住民の意向や実情に合わせて選択することが大切です。

「委託管理会社による責任施工(設計施工)方式」では、組合員の負担は少 ないものの、通り一遍の工事になってしまうことがあります。また、管理会社が、管理組合の立場に立って、第三者的に対応できる健全な管理会社ならばいいのですが、技術的な改修のノウハウを持ち合わせていなかったり、下請けとなる業者やメーカーから管理組合の了承なく手数料をとるケースも無いわけではありません。  

「施工会社による責任施工(設計施工)方式」では、組合員の負担はやや軽減されるものの、問題が発生した場合は、管理組合が直接交渉しなければなりません。また、工事内容、金額の妥当性を管理組合が判断しなければならないという問題もあります。安いからと飛びつくと結果的には管理組合にその負担が返ってくる可能性もあるため、セカンドオピニオンとして第三者が関与することが望ましいと思います。

「独立系設計事務所による設計監理方式」では、設計事務所の選定に組合員の負担がかかるものの、責任体制が分かれているため、チェック体制の公明性を追求することができます。しかし、その設計事務所の人材の資質によって左右される面も否めません。業者やメーカーと癒着して、業者に一部費用協力させることによって、極めて安価なコンサルタント費用を提示する設計事務所もあり、過去の実績を確認し、評判を精査する必要があります。

「管理組合による直営方式」では、コンサルタント委託経費の削減に効果があるものの、組合員には重い負担がのしかかります。また、組合担当役員あるいは一部の声の大きい組合員の意見に流される傾向にあり、不透明な絵図が構築されたり、工事が自己満足的なものに陥りがちになるという問題もあります。

パートナーの選定ポイント

パートナー選びのポイントとなるのは、

  1. 第三者の立場で管理組合をサポートできるか
  2. 公明性・透明性を確保しているか
  3. 改修技術(ハード面)とマンション管理運営(ソフト面)のノウハウを持っているか
  4. 十分な改修実績があるか
  5. 評判がよいか
  6. コンサルタント費用の算出根拠が明確か
  7. 自己中心的でなく話しやすい人柄か

などの点だと思います。

コンサルタント料は工事費と比べると、一般的には2桁低い金額です。ですから、パートナーを選ぶ際は、単に金額で選ぶのではなく、建物のホームドクターとして、継続的に関わることが出来る人材であるかなども考慮して、幅広い視点から選ぶことも大切だと思います。
この後、工事会社の選定、工事管理(監理)と検査、アフター点検と対応など大規模修繕工事には様々な作業が続きますが、信頼の置けるコンサルタントは、管理組合の心強いパートナーとなると思います。

杉並区住宅課長 小峰孝氏のご挨拶
個別相談会