第31回「失敗事例から学ぶ大規模修繕の進め方」 ~管理に関する悩みや経験、解決の智恵を共有する交流会(グループディスカッション)と講演~
講師:杉並マンション管理士会 塚部彰
今回のセミナーでは、以前から要望の多かった交流会(グループディスカッション)を実施しました。
マンション管理についての悩みや疑問について共有し、その解決法について参加者それぞれの知識や経験を基に活発な議論がなされました。
交流会に先立つ講演では、大規模修繕工事の進め方について、過去失敗事例を検証しながらご説明しました。
I. 前提
大規模修繕の失敗とは何か
- 品質低下(無知、手抜き)
- 高い工事費(無駄、見た目だけの工事)
- 居住者同士のわだかまり
そもそも大規模修繕の目的とは
- 建物機能維持:寿命延伸(躯体、防水)、安全性確保、美観
- 財産価値の維持向上:いざという時に売却できる
- 快適なマンションライフ
II. 事例
1.「手抜き工事ではないかとの不信感が残ったまま工事終了」‥の事例
[問題の所在]
- 管理会社お任せの進め方
- 管理組合だけでのチェック能力の限界性
- 工事保証の曖昧性
[事例からの教訓]
- 極端な請負金額値切りは安かろう悪かろう
- 品質はプロでなければ分からない
- プロでも表面だけでは見抜けない
2.「どこの会社に工事を依頼するか決断できない」‥の事例
[問題の所在]
- 工事仕様書無し、見積もり項目書無し=工事内容の曖昧性
- 管理組合独自での取り組みの限界性
[事例からの教訓]
- 工事費=品質×数量 ‥見抜くことは難しい
- 専門家(コンサル)に依頼することも有力な選択肢
3.「コンサルタント選びを振り出しから」‥の事例
[問題の所在]
- 管理会社まかせ‥理事会の怠慢→法外な工事費、調査診断設計料
- 新理事長による第三者コンサルタントへ再依頼
[事例からの教訓]
- 大規模修繕の進め方について情報収集すべき
- 不安点を残したまま強引に進行しない
- ※この事例の場合、新理事長の英断により当初支払った調査診断設計料は無駄になったが、それに倍する効果コストカットとトラブル回避に繋がった。
まとめ
○大規模修繕成功の鍵は良質なパートナー(コンサルタント)選び。
○ただしコンサルタントも玉石混淆→情報の収集と一定の勉強が必要。
交流会(グループディスカッション)
参加者各々の興味関心に従い、
1.「組合運営や住民マナー等に関すること」
2.「大規模修繕や長期修繕計画等に関すること」
の2グループに分かれ、各自の経験や悩みの紹介の後、活発な議論が交わされました。
交流会終了時には、それぞれのグループでの議論の要旨を発表し、情報の共有化を図りました。
一定の評価をいただきましたので、今後も改善を加えつつ実施して参りたいと思います。