第33回「管理組合目線での大規模修繕工事」 ~その足掛かりから考えてみよう~
大規模修繕工事について、管理組合や理事会の工事内容やコストに対する知識には限界があり、いきおいや業者任せとなってしまうのが実態のようです。また、巷間発信されている周期や工法、コスト圧縮等についての議論も、多くは業者や専門家目線のものであり、それぞれ個別の事情を持っているはずのマンションの居住者目線での発信が少ないのが現状です。 今回のセミナーは、都心の超高層マンションで話題になった足場問題等を、居住者の立場に立って考えました。
仮設足場について
講師:一般社団法人杉並マンション管理士会 柏 志郎
先ず、仮設工事の内容をご紹介します。
仮設工事
◆共通仮設工事
- 仮設事務所(設計監理者・施工管理者・作業員)
- 仮設トイレ・仮設水道・仮設電気
- 危険物貯蔵庫
- 工事用掲示板
- 養生・仮囲いなど
◆直接仮設工事
- 仮設足場
- 朝顔
- ネット養生等
直接仮設工事の内の、「仮設足場」には、どの様な種類があるのか、どんな特徴があるのかご紹介致しました。
枠組足場
- コスト(金額)については、m2いくらで大まかに掴める
- 工事中の環境面では、居住者にとってはうっとうしさや不安感がある。
- 設計監理者・施工管理者がいつでもチェックできる。工事の品質確保(検査)
- 足場を昇降し作業するにあたって法的資格は必ずしも必要ない(管理組合側の立会検査も容易)
ゴンドラ
- 外壁調査や部分補修から大規模改修工事まで様々な分野で使用されている。
- レンタル・リース商品であるため、積算方法は台数×使用日数×単価となる。
- ゴンドラを操作するためには特別教育が必要、有資格者1名いれば同乗者は資格不要
- 「製造の許可や検査証の交付、各種検査等について細かな規制がされており、その規制は、製造から設置、使用段階まで及ぶ」
移動昇降式足場
- レンタル・リース商品であるため、積算方法は台数×使用日数×単価となる。
- 移動昇降式足場は操作・搭乗の資格は不要
- 足場として労働基準監督署への申請が必要(安全衛生法第88条計画の届出等)
それぞれの足場を組み合わせることにより、より居住者への日照問題の負担を少なくすることが可能となり、また、管理組合のニーズに合わせたコストの使い方を選択することができます。
ブランコ(ロープ高所作業)
- 5〜6年前からメディアでも話題になり、インターネット等で外壁改修工事をPRしたホームページが増える
- ブランコ作業での事故・災害の増加
- ブランコは作業床ではない=足場ではない
- 現状ではブランコ作業での法的規制はないが、平成28年1月1日より規定が新設される。また、特別教育も必要となる(施行日:平成28年7月1日)
- 施工の品質は確保できるのか?
- 現場管理者や設計監理者による検査はどうやってするのか?
このブランコ(ロープ高所作業)につき、推奨する業者もおりますが、安全性が確保されておらず、死亡事故も発生しております。また施工品質にも疑問が残ります。安価であるからと言って、安易にご契約をされない様、慎重な対応をお勧め致します。
まとめ
- ゴンドラや移動昇降式足場などを採用すれば枠組足場より安くなるというわけではない。
- それぞれのマンションの環境・部位・工事内容によって最適な仮設足場を選択することが重要。
- 機械式足場を採用する場合、いかにレンタルリース期間を短くするか。あるいは台数を減らして長期的な工事(時間をかけて少しづつ)とするかなど、工事内容を精査し、施工会社まかせでなく管理組合の考え方も反映させるべきであると考えます。
計画的維持管理の為の主体的管理組合の取り組み方
講師:一般社団法人杉並マンション管理士会 塚部 彰
大規模修繕の施工に際し、「管理会社任せになってしまっている」「管理会社の都合の良い大規模修繕となってしまっている」という相談が当会へ多く寄せられております。
管理組合が主体的に修繕に取り組み、区分所有者・居住者双方にとってより満足度が高く、更に将来の課題を見据えた修繕工事とする為には、どの様な進め方をすれば良いかについてのポイントを、下記の計画案例をベースとしてご紹介致しました。